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2007年01月10日

コンクリート構造物の信頼性

コンクリート屋の私は現場調査にも行きますが,机の上でチマチマと計算もしています。コンクリート構造物の地位向上委員会委員長(嘘ですよ!)として,今日はそんな計算の話。

コンクリート構造物には残念ながら「ひび割れ」が付き物です(ただし,ひび割れにも有害なものと無害なものとがある)。でも,構造物を造る前に,ひび割れが「いつ頃」「どこに」「どれくらい」「どのように」出るか,を予測することができる種類のひび割れもあります。それは,セメントが水和するときに発熱する温度に起因するひび割れです。

model.bmp

それを予測するには,まず構造物のモデルを作ります。

左の絵で,薄黄色の部分は地盤。構造物よりも地盤をずっと大きくとります。薄緑色の部分は,スラブと呼ばれるいわば床の部分。水色の部分が壁。このモデルは,壁に発生するであろうひび割れを予測する時の典型的なモデルです。たかが,壁に発生するひび割れを予測するだけなのに,モデルはその何倍も大きなものを作らなくてはなりません。この構造物モデルはモデル化する時点からが勝負なのですが,私にはそのセンスがあまりなくいつも四苦八苦しています。

モデルができたら,様々な条件を入力して計算します。

例えば,下の左の絵は温度の計算結果。コンクリート構造物の,どこがどのくらい熱くなるかが一目でわかりますよね。コンクリートの熱が地盤の広い範囲にも及んでいることがわかります。

下の右は応力の計算結果。応力は温度同様,壁の中央で大きくなることがわかります(赤い方が応力が大きい)。つまり,この部分でひび割れが発生する可能性が高い,ということになります。もちろん,「可能性が高い」という定性的な判断ではなく「何%の確率で」と定量的に判断できます。

温度.bmp

応力.bmp

henkei.bmp

左の絵は,変形の大きさ。相当デフォルメしてありますが,壁の中央あたりで大きく縮み,反対に構造物の端部で伸びているのがわかります。

と,まあ,こんな計算をして,できる限り良い(耐久性のある,信頼性のある)構造物を造ろうと,コンクリート屋は日夜努力しているわけで,皆様の暖かいご支援を宜しくお願いいたします。

投稿者 watanabe : 2007年01月10日 21:07

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コメント

学生時代、コンクリート工学は、教授が全国的に有名な難しい人でしたので、はなから一生懸命勉強しました。でも、残念ながら社会にでてから使っていないので、今では覚えていることも少ないです。
ですが、コンクリートが私たちの社会にどれだけ貢献しているかは、もっと認められて良いと思います。
ひよこさんの思いも私にはわかります。
土木って、すごく私たちの生活に密着しているわりに、理解されていないように思います。
理解を得る努力とともに、より優れた(現在では自然に近い、環境にやさしい)技術を開発していくことが求められているのでしょうね。

投稿者 shiratori : 2007年01月11日 20:03

そうなんですよね~。土木ってその真価をきちんと理解されてませんよね~。でも,白鳥さんが言われるように,理解を得る努力を今までして来なかったことも事実だと思います。これからの時代は,情報公開も上手なPRも,そして本質であるところの技術開発も積極的に行っていかなければなりませんね。私たちの責務も大だと思っています。

投稿者 ひよこ : 2007年01月12日 19:59