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2006年09月04日

聖家族教会……神は急がない?

2006年6月、聖家族教会「サグラダ・ファミリア」は2026年頃に完成すると報道されました。SPAIN_0012.jpg

「えっ!?」 その時は目を疑いました。

私の学生時代、サグラダ・ファミリアは完成までにあと100年、いや200年はかかる……いやいや、200年後にも完成しないかもしれない、といわれていたからです。当時、未熟な建築学生だった私は、アントニ・ガウディが設計図を残さなかったから……、スペイン人気質も……、日々建設に対峙することそのことが宗教であり、つまり完成させずに造り続けることに意義がある……、などなど、いろいろと考えました。
ガウディ自身も「神は急がない」と語ったと伝えられています。
しかし、理由は至ってシンプル、資金不足だったそうです。

日本人には観光施設のよう思われがちですが、宗教建築ですので、募金・寄付金および施設の入場料が建設の資金源です。そのため、建設は遅々として進まず、永遠に完成しない建物のレッテルを貼られていました。

が、20世紀末、事態は急変します。

1992年のバルセロナ・オリンピックで注目度が急激にアップし、2002年ガウディ生誕150年を記念したイベントが全世界で話題を呼び、2005年ついに世界遺産に登録されて(未完のため登録されないだろうと言われていたのですが……)観光客が爆発的に激増しました。

ガウディは設計図を残さず市電にひかれて亡くなり、跡を継いだ弟子達が作った資料もスペイン内乱で消失してしまう……ガウディの構想通りの建築物を完成させることは不可能となり、それでもサグラダ・ファミリアの建造を続ける意味はあるのだろうか、疑問と議論は尽きませんでした。それでも時代時代の建築家・彫刻家・職人たちの力で、1935年「ご誕生の門」が完成し、現在2006年「受難の門」が完成しました。2008年には身廊部に屋根をかけ教会として利用できるようになるそうです。「栄光の門」が完成すると言われている2026年まで20年、そう遠くない未来です。

完成を見届けることは100%不可能だとあきらめていましたが、10年ぐらいのインターバルでバルセロナの地を踏み、進捗状況を追いかけていこうと真剣に考えていました。
それが、20年後、決意(?)どおりにいけば、これから2、3回行くうちに完成をみることができるなんて……。
嬉しいような、信じられないような。


サグラダ・ファミリアには、今まで3回ほど行ったことがあります。

● 1985年1月、初めてバルセロナに。
せっかくなのでサグラダ・ファミリアが窓からみえるホテルに滞在しました。
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学生時代の写真はどこにいったやら。これぐらいしか見つかりません。
それでも完成版のファサードと1階平面計画がわかる貴重な資料です。

● 1991年1月、2回目。
出張で行きました。
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ご誕生の門。 ディテールがとにかくスゴイ!ですよ。
劣化も始まっています。
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受難の門のキリスト像。新しい解釈・造形のキリスト像が話題に。
見ればすぐわかりますが、ご誕生の門と受難の門のデザインのトーンの違いは、かなり歴然としています。

● 2002年3月、3回目。
建設がずいぶん進んでいることにびっくり。
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一番古いご誕生の門のファサードと 、新しい植物モチーフの列柱。
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建設資金が潤沢なので、仮設を広範囲に組んで、建設工事は加速するばかり。
鉄筋コンクリート造の配筋も見られます。


現在の問題は、高速鉄道AVEが、サグラダ・ファミリアの直下に全長約6kmのトンネルを建設する計画をたてていることです。スペイン政府は「建設工事中に地盤がぐらつくなどの懸念はない。教会への影響はほとんどない。」とコメントを出していますが、教会関係者は猛反対しています。


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お馴染みの4本のとうもろこし。2002年旅行中のスケッチ。

投稿者 MCAT : 2006年09月04日 20:23

コメント

ガウディの作品は、私は、ごちゃごちゃしていて、おどろおどろしいのが好きなんですと言い切っていて、シンプルな作品よりも、逆にすがすがしく感じ、誰がなんと言おうと自分の好きを追求し徹底したエネルギーが詰まっているように、私は感じます。
サグラダ・ファミリア聖堂は、完成するのですか。実際行って見ると、もっと迫力があるんだろうなあと思います。

投稿者 一口カステラ : 2006年09月06日 20:03

ガウディのデザインは、自然の事物(植物、小動物など)をモチーフにしているので、複雑な造形、有機的な曲線が特徴ですよね。
もっちろん、ガウディがモザイクタイルを張ったり、ドラゴンを鋳造したり、木製椅子の曲面を削り出したりしているわけではありません。あのようなディテールの美しさは(おどろおどろしさも含めて)、各種技術の職人さんの魂と技の賜物だと思います。

投稿者 MCAT : 2006年09月07日 19:05

僕の生きているうちに完成は絶対無理だと思っていましたが。最初は、なんてグロテスクなデザインで、絶対日本人好みではないなーと一人合点したものですが、これも見慣れると癖になるし、作品図集を買い求めたりしました。日本人の一人も参加していたんじゃないでしょうか。これも、日本に置き換えれば、左甚五郎の日光東照宮に似たものがありますね。徳川家の威信を示す豪華絢爛だけでなく、また外国人は違った文化・感性を持つんじゃないでしょうか。

投稿者 チョコ : 2006年09月11日 18:08

チョコさま

日本人の主任彫刻家は外尾悦郎さんです。
資料がほとんどない状況で、ガウディが何を考え何を造ろうとしたのかに常に向き合い、サグラダ・ファミリアを『育てている』人です。

投稿者 MCAT : 2006年09月12日 17:33